自然災害で借金が返せなくなったときの対処法

自然災害で被災し、借金の返済が困難になった方々へ向けた債務整理の方法を解説しています。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の概要、メリット、具体的な手続きの流れを分かりやすく説明します。

目次

被災者向け債務整理ガイドラインを活用する

どんな災害が対象?災害救助法との関係

自然災害で借金が返せなくなった時、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を活用できる可能性があります。このガイドラインは、災害救助法が適用された自然災害の被災者を対象としています。

災害救助法は、地震や台風、豪雨などの大規模な自然災害が発生した際に適用される法律で、被災者の生活を支援するためのものです。例えば、東日本大震災や熊本地震、西日本豪雨などが該当します。

ガイドラインの対象となる災害は、2015年9月2日以降に災害救助法が適用されたものとなっています。つまり、最近の大きな自然災害であれば、ほとんどが対象となる可能性が高いです。災害救助法が適用されたかどうかは、お住まいの自治体や内閣府のウェブサイトで確認できます。

→内閣府の防災ページ

誰が利用できる?個人と個人事業主の違い

このガイドラインを利用できるのは、個人の方と個人事業主の方です。ただし、法人は対象外となっています。個人の方の場合、住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどの借金が対象になります。一方、個人事業主の方は、事業用の借入れも含めて対象となります。

ガイドラインの利用条件

  • 災害の影響で借金の返済が困難になったこと
  • 借金の返済について誠実であること
  • 財産状況を正直に開示していること
  • 破産手続きなどの要件に該当すること

個人事業主の方の場合、追加で事業の再建可能性が求められます。つまり、債権者の支援を受けて事業を継続できる見込みがあることが条件になります。このガイドラインを利用することで、破産手続きなどの法的処理を避けつつ、債務の減額や免除を受けられる可能性があります。ただし、すべての人が利用できるわけではないので、詳しい条件は弁護士や金融機関に相談してみるのがよいでしょう。

ガイドラインを使って得られる3つのメリット

ブラックリスト回避

自然災害被災者向け債務整理ガイドラインを利用すると、個人信用情報機関に債務整理の記録が残らないというメリットがあります。通常、破産や民事再生などの法的な債務整理を行うと、その情報が個人信用情報機関に登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまいます。

これにより、新たな借入れやクレジットカードの作成が困難になることがあります。しかし、このガイドラインを使用した場合、そのような記録は残りません。つまり、将来的な借入れやクレジットカードの利用に影響を与えないのです。これは被災者の方々が生活を立て直す上で非常に重要なポイントです。

例えば、災害後に新たな住宅ローンを組む必要がある場合でも、このガイドラインを利用することで、その可能性を残すことができます。また、事業者の方にとっては、事業再建のための資金調達の道を閉ざさないという意味でも大きなメリットとなります。

無料の専門家によるサポートが得られる

このガイドラインを利用する際、国の補助により無料で専門家のサポートを受けられるというのも大きなメリットです。通常、債務整理を行う場合、弁護士などの専門家に依頼すると高額な費用がかかることがあります。しかし、このガイドラインでは、「登録支援専門家」と呼ばれる弁護士や公認会計士、税理士などの専門家が無料でサポートしてくれます。

具体的には以下のようなサポートを受けられます

  • 債務整理の申出に関する支援
  • 必要書類の作成と提出のサポート
  • 調停条項案の作成支援
  • 債権者との交渉の補助
  • 特定調停手続きの支援

これらの専門的なサポートを無料で受けられることは、被災者の方々にとって大きな助けとなります。複雑な手続きや専門的な知識が必要な場面でも、安心して債務整理を進めることができるでしょう。また、専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な債務整理の方法を選択できる可能性も高まります。

財産の一部を手元に残せる

このガイドラインを利用すると、一定の財産を手元に残したまま債務整理を行える可能性があります。通常の破産手続きでは、債務者の財産のほとんどを処分して債務の返済に充てる必要がありますが、このガイドラインではそれとは異なるアプローチを取ることができます。具体的には、以下のような財産を手元に残せる可能性があります。

  • 預貯金の一部(上限あり)
  • 生活に必要な家財道具
  • 仕事に必要な道具や設備
  • 災害義援金や保険金の一部

これらの財産を手元に残せることは、被災者の方々が生活や事業を再建する上で非常に重要です。例えば、預貯金の一部を残すことで、当面の生活費や住居の確保に充てることができます。また、事業者の方にとっては、仕事に必要な道具や設備を保持できることで、事業の再開がスムーズになる可能性があります。

ただし、具体的にどの程度の財産を手元に残せるかは、個々の状況や債権者との交渉によって変わってきます。専門家のアドバイスを受けながら、自分の状況に最適な方法を選択することが大切です。

債務整理の手続きの流れ

債務整理の申出と一時停止

自然災害による被災者の債務整理ガイドラインを利用する場合、まず最初に行うのが債務整理の申出です。この手続きは、以下のような流れで進めていきます:

  1. 最も借入額が多い金融機関(主たる債権者)に対して、ガイドラインの利用を申し出ます。
  2. 主たる債権者から同意を得たら、全ての対象債権者に債務整理の申出を行います。
  3. 申出と同時に、財産目録や債権者一覧表などの必要書類を提出します。
  4. 申出が受理されると、一時停止の効果が発生します。

一時停止とは、債務の返済や債権者からの督促が一時的に止まる状態のことです。これにより、債務者は落ち着いて債務整理の手続きを進めることができます。ただし、一時停止中は新たな借入れや資産の処分も控える必要があります。

この期間中に、登録支援専門家のサポートを受けながら、次の流れである調停条項案の作成に向けて準備を進めていきます。一時停止は債務者を守るための重要な仕組みですが、同時に責任ある行動も求められるので、専門家のアドバイスを聞きながら慎重に対応することが大切です。

調停条項案の作成と提出

調停条項案は、債務整理の具体的な内容を示す重要な書類です。

作成の流れ

  1. 登録支援専門家の協力を得ながら、調停条項案を作成します。
  2. 案には、債務の減額や返済期間の延長などの具体的な提案を盛り込みます。
  3. 作成した案を全ての対象債権者に提出します。
  4. 債権者に対して、調停条項案の説明を行います。
  5. 債権者からの同意や意見を集めます。

調停条項案の内容は、債務者の状況や将来の見通しによって異なります。例えば、収入が見込める場合は分割払いの提案を、資産がほとんどない場合は債務の大幅な減額を提案するなど、個々の状況に応じた内容となります。この段階では、債権者との間で交渉が行われることもあります。調停条項案の作成は債務整理の核心部分であり、専門的な知識が必要となるため、登録支援専門家のサポートが特に重要になってきます。彼らの助言を得ながら、自分の状況に最適な提案を作成することが、債務整理を成功させるカギとなります。

特定調停の申立てと成立

全ての対象債権者から調停条項案への同意が得られたら、次は特定調停の申立てを行います。特定調停とは、裁判所が関与する形で債務整理を成立させる手続きです。この段階の流れは以下のようになります。

  1. 債務者が簡易裁判所に特定調停の申立てを行います。
  2. 裁判所で調停期日が設けられ、債務者と債権者が出席します。
  3. 調停委員の立ち会いのもと、最終的な合意内容を確認します。
  4. 合意が成立すれば、それが調停調書として作成されます。
  5. 調停調書が作成されると、法的な効力を持つ債務整理が成立します。

特定調停の申立ては、それまでの当事者間の合意を法的に確定させる重要な手続きです。この段階で成立すると、調停条項案の内容が法的な拘束力を持つことになります。例えば、債務の一部免除や返済期間の延長などが法的に認められ、債権者はその内容に従わなければならなくなります。

ただし、特定調停の申立てには裁判所への手数料が必要となるので注意が必要です。また、調停期日には原則として債務者本人が出席する必要があります。特定調停の成立によって、自然災害で被災した方の債務問題が法的に解決され、新たな生活や事業の再建に向けて大きく前進することができます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次